
電車のドア前が混む理由も、ポイント還元と値引きの損得も、日常の多くが数学で綺麗に紐解けます。難しい数式を解くためではなく「今日を少し賢く、心地よく生きる」ための知恵を新刊に込めました。
「どうすれば、数学を好きになれますか」
数学を教えていると、ときどきこう尋ねられます。私の答えは単純です。数学のいちばん面白いところから、先に味わってみればいい。
スポーツ観戦を楽しむために、まずルールブックを暗記する人はいません。音楽を好きになる前に、音階や和音の試験に合格する必要もないはずです。心を動かされる瞬間が先にあって、「もっと知りたい」という気持ちはあとからついてくる。人は、わかったから好きになるだけでなく、好きになったからわかりたくなるものです。
もちろん、学校の数学には決められた順番があります。正負の数を学び、文字式へ進み、方程式を解き、関数や図形へ。体系的に身につけるには、この積み上げが欠かせません。
けれど、大人が数学ともう一度出会い直すときには、別の道を歩いてもいいのではないか。そう思ってこの本を書きました。ですから本書は、いわば数学の幕の内弁当です。
暮らしに潜む数学、お金の損得、パズル、数学者たちの生涯、仕事に生かせる考え方を、彩りよく詰め合わせました。最初から順に読む必要はありません。
目次を眺めて、好きなおかずから召し上がってください。「じゃんけんなら読めそうだ」「宝くじの話は気になる」。入口は、それで十分です。
